トラブルにならないための〜法律の相続対策
トラブルにならないための〜法律の相続対策
文書作成日:2016/08/20


 今回は相談事例を通じて、遺産分割方法を長男に決めさせるという遺言の効力についてご紹介します。




 先般父が亡くなりました。相続人は、配偶者A、長男B、長女Cの3名です。
 父は、生前に自筆証書遺言を作成しており、その遺言書には「遺産分割の内容については、長男Bが決める。」と記載がありました。父の遺言に従うと、全て長男Bの一存で遺産分割の内容が決められてしまいますが、このような遺言は有効なのでしょうか。




 自筆証書遺言の要件を備えていれば、遺言としては有効となりますが、今回の問題は、その内容にあります。




 この自筆証書遺言の内容は、要するに、遺産分割方法の指定を第三者に委託する趣旨のものと考えられます(後記民法第908条)。このように、遺言によって遺産分割方法の指定を第三者に委託すること自体は、民法で認められています。

 しかしながら、同条の分割方法を委託する「第三者」とは、共同相続人以外の第三者であることを要する(そのような指定は無効)とする裁判例(東京高裁昭和57年3月23日)があります。この点に関しては、学説上も争いのあるところですが、同条の「第三者」という文言と、共同相続人の一部に遺産分割方法の指定を委託するのは公正が期待できないことを理由とする判断だろうと思われます。

 この判決の理解に従いますと、(遺言者の希望とはずれるかもしれませんが)今回の自筆証書遺言は、相続人のうちの1名に遺産分割方法の指定を委託するものとして、その内容(遺産分割方法の指定の委託)が無効であると考えられます。

 自筆証書遺言は、手軽に作成できる遺言書ですが、法的な検討を経ていないため、本件のように、せっかく作ったのにその内容に不備があるため効力がないということがあります。専門家と相談し、公正証書で作成されることをおすすめします。


【民法第908条】
 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。



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