トラブルにならないための〜法律の相続対策
トラブルにならないための〜法律の相続対策
文書作成日:2017/01/20


 今回は相談事例を通じて、被相続人が契約者である貸金庫の開扉についてご紹介します。




 夫が亡くなりました。法定相続人は、妻である私と子2名です。預金及びすべての動産を私に相続させる旨の遺言がありますが、銀行で貸金庫は私一人では開けられないと言われました。私は遺言執行者にも指定されています。それでも私だけでは開扉できないのでしょうか。




 遺言の中で貸金庫についての記載がなければ、たとえあなたが預金及び全ての動産を取得し、かつ遺言執行者であっても一人で貸金庫を開扉することはできません。貸金庫契約上の地位は本遺言の記載範囲外と考えられ、遺産分割があるまで相続人の準共有となり、全相続人の同意の下での開扉が必要となります。




貸金庫契約

 法的性質は「当該貸金庫の場所(空間)の賃貸借である」とされています。よって、貸金庫契約の契約者が亡くなったとしても、その性質上、貸金庫契約は当然には終了しません。亡くなった方の権利・義務の一つとして、貸金庫契約上の地位(貸金庫の賃借権)は相続人に承継されます。

 裁判例にも、「遺産分割協議条項中に被相続人の銀行に対する貸金庫使用権の帰属者の明示がない場合、当該協議条項により『その余の遺産全部』を取得するとされた相続人がこれを相続する」(東京高判昭和58年7月28日 金法1054号46貢)と判示された例があります。この判例によって、貸金庫使用権が他の相続財産とは独立して取得者を定めるべきであることが明らかとされています。


 一部の相続人や遺言執行者の方から、貸金庫内を確認したいということで開扉を求められた場合などに銀行が応じると、銀行側は善管注意義務違反の責任を問われかねません。このようなこともあり、銀行側の対応も厳しくなっています。

 遺言を作るなら、公正証書遺言で貸金庫開扉の権限も遺言執行者の権限に含める旨を明記しておくと手続きもスムーズになり、良いでしょう。



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